l'essentiel est invisible pour les yeux

Sunday, April 15, 2007

IPOから学んだ事柄

経営者像に正解は無いし実に色々と存在する。業種により成果をあげる経営者像は異なるだろうし、時代によっても変化するだろう。忠誠を激しく要求するようなスティーブジョブスのような経営者もいれば、ある意味無駄なルールは無視できるエッジのきいた人間を望むようなCEOもいる。

おそらくこれは経営者のバックグラウンドに依存するところが大きい。
UIEJの社長は営業出身でシリコンバレーで働きグリーンカードも持っている。そして、人脈や恩義・忠誠を非常に大事にしているように感じる。UIEのCEOは今でもプログラマであり型破りな意見を言う。相手が偉い人であったりクライアントであろうと自分の考えは突き通す人に見える。



ドリコムを辞めて1年になるがその間の変化はとても大きいようだ。
外野からの見物になるため、メディアを通じて誇張された認識なども含むかもしれない。しかし、「会社はファンのための物」と語るCEOは、外部ではなく社内にファンを作れているのだろうか?

上場企業で自由な社風という甘い言葉に誘惑されて入社した世間知らずの新卒の"ファン"などではなく、「CEOが示すビジョンを実現するためなら、倒れようとプログラムを書きつづける」というような明日の売り上げとなる技術を開発する優秀な技術者のファンを獲得できているのだろうか?

私がドリコムが一番失敗したと思うことはIPOではなく人事に対する散財だ。
経験が豊富な人間や優秀な技術者が転職したいと思える会社つくりではなく、なぜ新卒の採用なのか?魅力のある会社を作りプロモーションをかければ優秀な人間は自然と集まってくる。IPOで得た資金を散財しただけに見合う社員を集めれたのだろうか?その資金を優秀な技術者が集まる会社の風土作りへ当てていたらどういう社員が転職してきただろうか?

過去に成功したビジネスを捨てきることができず、売り上げが上がらない→営業力が足りないとの意思決定→PUSHの営業体制のため人材を整える→急速な人材確保のためにIPOで得た資金が大量に使われるというスパイラルにはまり、本来のコアコンピタンスであった技術や技術者が持つマインドに対するトップマネジメントの理解などどこかに忘れ去られているように感じる。

今の売り上げを確保するための社員だけでなく、明日の売り上げを作り上げる技術者が必要である。パイの合計が決まっている市場でゼロサムゲームをしていては企業の未来は無い。パイが無くなれば新たなパイがある市場に飛びつくことになる。

ドリコムに優秀な技術者がいるが、CEOの示すビジョンで彼らのマインドを魅了し引き止める事ができなくなった際には、優秀な技術者の大規模な流出が起こりえるかもしれない。そうなった時には、目先の売り上げに飛びつき、株式交換により外部の小さなベンチャーの買収を繰り返し、自社の営業力を使って売り上げを計上し上場させ有価証券売却益を本社の売り上げに付け替えるという図式しか考えられない。

私はそのような企業に何の魅力も感じない。

どうしても気になるもう一点が企業の情報統制の甘さである。
毎日が文化祭みたいな会社と書き、社内の写真やミーティングの内容などを赤裸々につづっている新卒社員のブログを時々拝見するが、まともな情報管理体制を引けているのか疑問である。

自由な社風で自分達が主役などという甘い言葉は、経験もあり実績もある優秀な社員が集まった上で初めて形になるものだろう。自由を履き違えてはいけない。

大和証券では新卒社員が5分遅刻した際に、上長がブチきれ机を蹴飛ばしその社員の胸ぐらをつかみかかり罵倒し、その後見せしめとしてその日一日中新卒社員で「遅刻に対して」というお題でMTGが開かれた話を友達から聞いた。新卒社員に対してこの上長が取った行動は正しかったと思う。


PS
私がIPOから学んだ事は、IPOをするために何をするかではなくIPOで得ることのできる資金で何をするかを見据えIPOすることだ。言われてみれば当たり前のことである。

写真は今日自宅に届いたテーブルの写真(写真は別のショッピングサイトのもの)。赤色がポイントとなっていてとてもカッコイイ。

追記
社内のマネジメント体制が確立していない企業が、なぜ企業にも大きな教育コストを割くことになる新卒の採用にこだわるのか?と考えた時の答えは、一つしか思いつかなかった。「新卒を採用しているという事」自体が急成長中の企業であるということを示すためのプロモーションだったのだろう。明らかにプロモーションすべき方向を誤ったように見える。企業のプロモーションも手がけた人事であっただけに、人事担当者の責任は重い。