l'essentiel est invisible pour les yeux

Saturday, July 14, 2007

計算機と右脳をつなぐ脳梁のイノベーションでクオリアの入力を可能に

UIEJには毎日35分かけて徒歩で通勤しているが、好きな音楽を聞きながらCoolなモノへの想像を膨らませるのが通勤途中の楽しみの一つだ。読んだ本の影響もあり、最近は脳に関する想像が多い。

私は脳神経科学についての知識は皆無だし、認知心理学についてもあまり理解していないが最近読んだいくつかの本から考えた事をまとめてみようと思う。あくまで妄想。

1950年代には既にJohn von Neumannが提唱していたニューラルネットワーク。50年前とは比較にならないぐらい技術が進歩した今でも難しい事が多いが様々なアプローチで真剣に進めていく価値はある。(脳をエミューレトするのではなく計算機と人間間の差を減らすとか)


左脳(== 計算機)と脳(右脳)をつなぐ脳梁(ヒューマンユーザーインタフェース)にイノベーションが求められる。
今、私が最も関心を持っているテーマがこれである。
様々な技術革新が行われ計算機のハードウェアは急速に進歩した。ウォークマン•iPodといったウェアラブルコンピューターの息吹も見られる。しかしインターネットへの入り口はブラウザがほとんどだし、入力でバイスは文字を入力する事で”やりたい事”を実現する物がほとんどである。

Wiiリモコン, DoCoMo 904シリーズ, iPhone, Surfaceのように実世界インタフェースを取り組む動きが盛んだ。iPhoneでは二指を広げると拡大、狭めると縮小という単純な動作に徹している。パターンを増やすとユーザーは混乱するので徹底したシンプルさ(例えば、Webkitから二指のイベントを扱う事はできない)は素晴らしいと思う。

10年後には"レゴのようなモノ"でマイホームの設計からデザインを顧客自身が行うようになるかもしれない。デザインやパターンはインターネットでダウンロードして利用できる。レゴの表面はダウンロードしたデータ中で指定された色に基づき発光する。そしてその模型をまたデータ化して不動産業者に送信し工事が始まる。

しかし、実世界インタフェースを取り込む入力デバイスの実用化にはまだまだイノベーションが必要だ。Newral Interfaceのようなインプラントで脳内にチップとトランスポーターを埋め込む話は大変面白いが、私はDARPAの研究者ではないし現在の興味深い技術をとっても簡単に利用できる製品を作りたい。2050年頃に臨床実験が可能になるかもしれない話では駄目である。

つまむ, ひっぱる, 興奮する, 落ち着く, 騒がしい, 静かだ, いい香りだ, など様々な実世界の概念が入力されて利用できるように入力デバイスのイノベーション(技術革新)が求められる。

そしてそれと同じぐらい大事なのが、左脳(計算機)が右脳の直感やアフォーダンスを予測しシミュレートすることである。東京大学の五十嵐健夫氏の研究デモは計算機が人間のアフォーダンスを予測し、人間にとっては当たり前の事だが計算機に取っては当たり前でない事をデータ化する試みだ。

http://130.158.75.1:443/esper2007/igarashi.wmv

つまり、クオリアをデータとして取り込みたいのである。


計算機と脳を含めた並列コンピューティング。
近い将来誰でもサヴァンになれる日がくるかもしれない。

計算機と人間は明らかに思考ロジックが異なる。物事を部分ではなく全体で捉えるのが得意な脳に対して、計算機は0と1という単純な2値の膨大な組み合わせで全体を精確な部分で構成する事に長けている。

近年世界最強のチェス専用スーパーコンピューターであるディープ・ブルーが人類を打ち負かした話は有名であるが、駒の動きを複雑化させたアリアマというボードゲームでは計算量が膨大になるため(まだしばらくは)人類が有利だと言われている。興味深いのは駒の動きの複雑度が増すにつれて、指数関数的に計算量が増大する計算機とは異なり人間はそのような事が無い。

私は次のように考える。
計算や記憶など計算機が得意とする領域は、脳の外部に置かれることになる。そして人間の想像力を司ると言われる右脳がデータを要求した時に、「いつ」「どこでも」「好きな時に」外部に蓄積されたデータを取り出したり、必要に応じて加工できるようになる。その際に問題となるのは最初に書いた計算機 == 左脳と右脳をつなぐ脳梁(==Human User Interface)での情報損失である。

実際にNational Science Foundation(アメリカ科学財団)は、世界の全人口の記憶の総量は1千2百ペタバイトであり、脳の外部に蓄積されている情報を合わせると1万2千ペタバイトになると結論づける。(※1) 外部に蓄積される情報量はますます増えると容易に予測できる。

脳を含めた巨大で膨大な並列ネットワークを個人が手に入れようとしている。しかしそれには計算機と脳をつなぐHuman User Interfaceのイノベーションが必要である。Human User Interface(脳梁)でデータの損失、つまり思った通りのデータがCRUDできないとかあり得ないのだ。

コンピューター関連テクノロジーの発展が人類の左脳の進化に影響を与える。
コンピューターの登場により数学界における問題解決のアプローチは大きく変わった。何百年という期間の間証明できなかった問題に対して、スーパーコンピューターの力を利用するごりおしの力技があらわれたからだ。ケプラー予想が有名である。この傾向を危惧する数学者も少なくない。

直感や意識など高次の抽象的な感覚がイノベーションにより登場した入力デバイスから計算機にINPUTできるようになれば、データ処理は計算機が行い人は感覚的な高次の概念を左脳(計算機)に入力する事に徹する事になる。人間はそれを意識する必要も無いし、人類の進化という長い時間軸で考えるならコンピューターの発展はホモサピエンスの左脳を萎縮させるのではないだろうか?


「1は背が高くてとっても光り輝いている」「4は内気でもの静か」と数字に色だけでなく様々な共感覚を持つダニエルのヒューマンドキュメンタリー「ブレインマン」をとても見たくなった。


CHANGELOG
*2007/07/15 右脳と左脳をつなぐ組織は脳幹ではなく、脳梁だったので修正。


参考文献


1. How Much Information? 2003
2. ぼくには数字が風景に見える, ダニエル•タメット 訳 古屋美登里
3. 超人類へ! バイオとサイボーグ技術がひらく衝撃の近未来社会