スティーブジョブスの目が好きだ。
スティーブジョブス 偉大なるクリエイティブディレクターの軌跡
ぎらつく眼光。みなぎる自信。自分が見る未来を信じて、決して疑わない驚くべき強さ。
そして、面白いと感じる物を見て取るや自分の考えなどあっさりと捨ててしまうしとやかさ。
アーティストとしての感性。
この本は、人間の目は、時間を経てこれほどまで変わる物なのか?と衝撃を与えてくれた一冊である。
Apple関連の本は、たくさん読んだが、この一冊はスティーブジョブスの写真集という意味で非常に価値のある一冊だ。Apple Iを送り出した頃の、眼光が鋭い、自信に満ちあふれたスティーブジョブス(と、少しやせているウォズ)の写真から、膵臓がんと診断され余命宣告を出され、不死鳥のごとくよみがえり「Appleは電話を再発明した」と話す2007年のMacExpoの写真までが掲載されている。あと、「昨日の事でクヨクヨするのではなく、一緒に明日を作っていこう」とゲイツと話す、D5公開インタビューの写真もだ。
本では、1985年の写真の次は、1995年まで写真が無い。
2枚の写真を比べると、この時期にジョブスの一気に禿げたのがよくわかる。年齢にして、30歳〜40歳。禿げるには少し早すぎる。Next Stepの経営難、資金難は、当時公表されていた情報よりもよほど大変だった事だろう。「誰がこの業界で毛が抜けるほど頑張ったのか?」とジョブスも言ったのだろうか?「自分の存在や自分が作った製品をどのように魅せるのか?」プロモーションは、とても大事な事だ。出すべき情報、魅せるべきブランドを徹底的にコントロールした、ジョブスのこだわりは素晴らしい。
ジョブスのファンで、ジョブスのようになりたい。
って思う人がいるかどうかわからないが、ジョブスを真似してもジョブスのモノマネにしかならない。ジョブスという存在がユニークだからこそ、価値がある。自分の存在をユニークな物にできた時に、それが自分のブランドになる。
PCから始まり、デジタルライフ構想、iPod, iPhoneへと今なお最先端を走り続ける男の半生を写真に収めたこの本には、エネルギーが詰まっている。
l'essentiel est invisible pour les yeux