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Friday, February 01, 2008

[DEMO 08] 脳にアクセスする近未来のハイテクおしゃぶり

DEMO 08 Panel: Research and Technology in Life, on the Web



DEMO 08のレポートを読んでいると、初日に開催された二つのセッションのレポートがあったのだが、その一つThe University of KansasのDr. Steven M. Barlow, Professorによる研究発表のセッションが非常に興味深い。

乳児は、欲求を伝えるために「泣く」事しかできない。何をしても泣き止まないため、子供の口を押さえつけたり、時には鬱病になり心中まで考える母親もいると聞く。おなかがすいたから、病気で苦しいからか、もしくはキングコング西野さんのライブがつまらないから泣いているのか、人間は知る術を持たない。

カンザス大学のSpeech-Language-Hearing研究室から発表されたのは、おしゃぶり型のデバイスを通して乳児の脳に働きかける事ができるものだ。このデバイスの可能性として、未熟児で生まれてきた乳児の脳の発達障害や、呼吸する/ミルクを飲み込むといった生きる上で必要な脳の発達を改善する助けをしてくれる。

The Actifier: "high-tech silicon pacifier"として紹介されているおしゃぶり型デバイス


ビデオ中で実験に参加した女性は、自然で快適で、ふつうのおしゃぶりと同じ感覚だったと語っているが、どうみても普通のおしゃぶりのサイズではない。とても違和感がある。実は、このおしゃぶりは乳児の口内の状態をリアルタイムで解析する高性能なコンピュータへと接続されている。

The instrument consists of a pacifier attached to a frame about the size of an infant's shoebox. The wiring in the frame connects to a high-speed computer that gives real-time analysis of the baby's oral motor skills.


このおしゃぶりは、乳児の靴箱程の大きさのフレームからなる。フレームは、ハイスピードなコンピューターに接続され、リアルタイムで乳児の口腔運動を解析する。



一番肝心な所だが、どうしてこのおしゃぶりを通して乳児の脳の状態を知れるのだろうか?

"Those muscles have direct connections to the brain stem, which has connections to higher structures, like the cerebral hemisphere,"

乳児の口角筋は脳幹への直接のコネクションを持つ。と博士は語る。

The Actifier(ハイテクシリコンおしゃぶり)の先に接続された、乳児の脳の状態をリアルタイムで解析するコンピューターがおそらくNTrainer Systemである。


When a pre-term infant is born, most of you know that it needs a lot of support in an incubator in order to finish developing outside the womb. As the machines used to support the pre-term infant do a good amount of the work for that infant, certain stimuli is lacking in the pre-term infant’s brain that would otherwise trigger development for necessities like learning how to suck (a feeding basic for infants). Technology working directly with the brain.


未熟児が生まれた際には、よく知られている通り、子宮の外で発達するために多くの支援が必要となる。このデバイスを使用する事で、乳児のために必要になる多くの仕事を支援する事ができるようになる。未熟児は、どのように(おっぱいを)吸えばよいかといった生きていく上で必要となる、特定の刺激が欠落している。テクノロジーは直接私達の脳に働きかけている。

ニューラルインタフェースの話は、人類に希望をもたらすだろう。この例では未熟児や乳児を持つ母親にとって明るいニュースであると思うし、目の見えない人、耳が聞こえない人に、インプラント型でバイスで電気信号を送る事で、"見えていると脳に思わせる"実験も成功している。ただし、人間は欠如している物を補うためではなく、自分の能力を増大させるためにテクノロジーに依存したいという欲求に打ち勝つ事ができなくなるだろう。ステロイド等と同様に能力増大のためにテクノロジーを利用する事は、法律で禁止されるだろうが、どこまでが欠如を補う物で、どこからが能力増強かと判断を下す事はとても難しい。

ニューラルインタフェースは、脳に電気信号を送る事で見えない物を見えているように感じたり、聞こえないものを聞こえているように感じる事ができるが、複合現実感(Mixed Reality, MR)も同様の問題を抱えていると思う。ニューラルインタフェースと同様に、MRも最初は多くの人間が抵抗を示すだろうが、ブレイクスルーを超えれば、普及は加速度的に進む。なぜなら、MRの世界にいない自分だけが、周囲の人間にくらべて損をするからだ。こうなると、MRの世界にいない事は、疎外感を生む。恐ろしいのは、現実と仮想の世界の区別がつかなくなる事である。仮想の世界では、自分の思うように生きる事ができ、自分のやりたいように振る舞う事ができる。そうなった時、脳は現実感を失ってしまうだろう。

これらのテクノロジーが多くの人に希望をもたらす事も事実。

参考