本リッツカールトン物語中にこんなエピソードがある。
ザ・リッツカールトン・ネイプルズでビーチアテンダントがある日、砂浜に並んだビーチ・チェアを片付けていた。すると一人の男性がゲストから「ビーチ・チェアを一つだけ残しておいて欲しい」と頼まれた。理由を聞くと、ビーチに誰もいなくなった時にそこに恋人を連れてきて、プロポーズをしたいのだという。
「もちろんですよ」。ビーチ・アテンダントはそう答えると急いでポロシャツにショーツというユニフォームからタキシードに着替えた。そしてテーブルに花を飾ってシャンパンを用意し、男性がプロポーズのときにひざまづいても服が汚れないようにと、砂の上にタオルを敷いて二人が来るのを待った。男性の元々の要望は、ただ単に「砂浜にビーチチェアを一つだけ残しておいて欲しい」というものであったにもかかわらず。
予想もしなかったロマンティックな演出に二人は大喜び。男性のプロポーズは大成功だった。
これは、従業員に与えられた$2,000の決済権を利用したスタッフの判断であった。
リッツカールトングループのホテルにはもちろんまだ泊まった事がない。そのサービス哲学に興味を持ったのはごく最近だが、じゃあ実際リッツカールトン大阪の最高のおもてなしを受けようというわけにも行かないので、リッツカールトンに関する本を借りることにした。
リッツカールトンの全スタッフは、クルドと呼ばれるサービス精神がかかれたカードを常に携帯しており、そのカードの最後はこう結ばれているという。
Fulfill even the unexpressed wishes and needs of oour guests
(ゲストが言葉に表さない願いや要望もかなえること)
ホテル業や水商売などでは、サービスを商売にするところではこれらは当たり前のことなのかもしれない。電話一本「今から行くから席用意しといて」と名前も伝えず電話しただけで、店にきたときには、自分のボトルがセットされテーブルにはお気に入りのチャームが揃えられておりお客は満足する。自分の名前を伝えて、これ用意してといちいち要望を出すようなお店にはリピーターは集まらないだろう。
サービス哲学は、ホテル業などでは"当たり前"のことなのかもしれないが、それを組織として「リッツカールトンのサービス哲学」として体系化しているところに興味を持った。
コンシェルジェ始めホテルスタッフには、幅広い知識が求められる。
そしてその知識をフル活用した上で現場で最良の判断を出来るように決済権を与えられている。興味深かったことは、「リッツカールトンではスタッフ自身も紳士淑女として扱われ、それにふさわしいサービスを提供することが求められる」ことだ。ソフトウェア業界で言えばドックフードを食うみたいなものだろうか(違うけど)。
クルドには、次のような言葉も書かれているようだ。
「We are Ladies and Gentlemen Serving and Gentlmen.」
紳士淑女をおもてなしする私達もまた紳士淑女である。
ゲストに対して最良のサービスを提供できるように、ゲストのクレームさえも機会と捉えて次のよりよいサービスにつなげる。ゲストをよく観察し何を求めているか?何ができるか?ということを自発的にスタッフが考える文化がそこにある。
「ふーん。まぁそらそうだろうな。」と思えばそれで終わりだが、自分の世界観や自分のいるフィールドに置き換えて考えるとそういうサービス哲学が全然甘いことがよくわかる。どれほどゲスト(ユーザ)を観察しその言葉に出さない願いや要望を叶えられているだろうか。
異業種から学べることは、まだまだありそうだ。
リッツカールトンでは、顧客満足度と顧客不満足度を数値化するサービスの品質管理(Service Quality Indicator)というシステムがあるが、これは工業産業からヒントを得たものだという。そういった異業種への積極的な学びの精神からリッツカールトンのサービス哲学と理論は構築されている。
作ったサービスは、人が使うものであるのに顔が見えていなかったり、使う人にどういう経験や物語を提供するかといったことをサービス業に比べるとそれほど考えれていないと思う。
リッツカールトン物語には、リッツカールトンのサービス哲学に関しての説明は非常に少なかった。哲学については、リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間がよさそうだ。
でも、世界中に展開するリッツカールトンの数々のホテルを多くのカラー写真付きで紹介している。その中でも特に魅力的に見えた三つ。
一つ目は世界一ロマンティックなホテル
二つ目は世界一セクシーなバスルームを持つホテル
三つ目はバリ
いやぁ、どれもすごい。贅沢でゆったりと流れる時間や空気といった最高の経験を体験できそう。
いつか泊まりたい。で、リッツカールトンの提供する最高のサービスを堪能したい。