l'essentiel est invisible pour les yeux

Tuesday, January 09, 2007

[本] The Wold Is Flatは今世界で起きている変化について頭を整理する一冊


少し前に中国からの留学生の自己紹介プレゼンを聞く機会があった。
彼の自信・自慢たっぷりの中に「ワタシのことキライな人多いデス。」という(謙虚さを示す?)セリフを何度もはさみながら話す様子や、とてつもなく強い知的欲求を持つオーラが溢れている彼に興味を持った。協調を好む日本人を気遣ってかは、知らないが「自分は嫌われてもしかたナイデス。」と何度も繰り返すため、「いやいや面白いよ。もっと話して」と何度もコメントした。

これまで、インド出身のエンジニアと働いた経験が無いのだが、彼・彼女らも強い知的好奇心とハングリー精神を持つ。世界中の優秀かつStay Hungryな人達が世界に飛び出し、または自国でGoogleを使って世界で起こっている最先端の知識にアクセスしていると思うと、その世界の中で自分はどこで価値を発揮すべきかと自問自答する一方で何かとてつもないことを起こせる時代が目の前に来ていると感じていた。でも、それが一体何なのかはっきりと説明できない。
今、世界で何が起こっているのか?もっと世界に目を向けなければいけない。近頃強くそう感じていたのだった。

先日フラット化する世界(原書 The World Is Flat)という本を見つけて、タイトルに強く興味を惹かれすぐさま上下巻合わせて注文して今日届いた。そして上巻を今読み終えた。(もちろんその際には原書と訳書のAmazonのレビューとレイティングを参考にした。本当にCGMは便利なものだ。)

そんな新しいIT世代のインドの若者を表す言葉にZippieがある。
Wired MagazineがHere Come the Zippies!(ジッピーここにあり)でZippieについて定義している。フラット化する世界(上)から引用すると、

年齢は十五歳から二十五歳で、活力に富み、ジェネレーションZに属する。男女いずれも同じで、学生・職業人の差を問わない。野心や願望を前面に押し出す。冷静で、自信に満ち、創造的だ。自らやりがいのある困難な仕事を求め、リスクを好み、怖れをしらない。
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ジッピーは定められた運命ではなく目的を原動力とする。内ではなく外に目を向け、現状にとどまらずに上昇する。

彼らはルイ・パスツールの残した「幸運の神様は、常に用意された人にのみ訪れる。」という言葉を心から良く理解しているだろう。彼・彼女らがアメリカ・日本にとって最高のビジネスパートナーにもなり、低級~中級の技術者の雇用を奪う存在になることについては本書で多くのページを割いて語られている。

インドや中国で働く若者は、アメリカや中国にでて高度な知識の勉学に励み習得しようとする者もいる。Y2K特需以降の光ファイバーインフラの発展によりインド国内で海外から下請けを請負いその中から知識を吸収し自分の物にしていく者もいる。

世界のフラット化はグローバルレベルでの最適化をもたらす。
より低コストで出来る仕事や高い技術レベルを要さない仕事は海外にアウトソーシングされ、自国内には専門的かつ高い能力を要する仕事や病院・サービス業といった直接的な仕事だけが残る。Zippieや日本やアメリカに留学する人達の知的好奇心とハングリー精神は、多くの日本人にはまだまだ足りないものだ。

エドウィン・ランド博士が言ったこの言葉が気に入っている。

世界とは、収穫されるのを待っているこの実り豊かな畑のようなものです。種はもう蒔かれていて私のすべきことは、行ってもっと多くの種を蒔き、収穫することです。

フラット化が進む世界では田んぼには水路が完備され、品種改良が進む苗がそろっている。ただ、それらの苗の存在や水路や温度調節の使い方を知らなければいい作物は育たない。今世界で何が起こっているのかを知りそれらへのアクセスパスを持つ必要がある。

この10年~15年あまりに多くのイノベーションが並行して同時に発生したため、その偉大さをまだはっきりと理解できていない。ただ何か凄いことを起こせる時代に突如として突入した。そしてフラット化が進む現在はルネサンスに例えられることもある。

人生は短く地球の時間軸で見ると無に等しい。
また時間という資源は誰でも共通に同じく消費されるという。しかしこれは語弊があると思う。1万年前では、1日は生物にとって共通で1日だった。フラット化が進む世界では違う。1日という時間に10日分の価値を見出すことも可能だろう。
そんな時代に、世界を変えるチャンスに自分の人生をかけれるというのはなんとエキサイティングなんだろう。

本の感想が抜けてしまったが、多くのブログ等で本書についてまとめられている。
経済に関する知識や歴史を知らない私には、インドの発展やアメリカとの関係について勉強になる部分が多かった。どちらかというと、目からうろこ的な目新しいことがかかれいてるというよりは現在世界で起こっていることと、この20年で同時に大量発生したイノベーションについて整理する一冊として価値のある本であると思う。

下巻が楽しみだ。