l'essentiel est invisible pour les yeux

Friday, January 12, 2007

The World Is Flatは新しい物の見方を与える一冊

フラット化する世界の下巻を読み終えた。
上巻を読み終えた前回、「頭を整理する一冊」と書いていたのは大きな間違いだった。3重の集束を初めとして付箋を貼った箇所を何度も多読する必要性を感じた。

偉大な著作には、人々に新しいものの見方を与えるという目標がある。フリードマン氏は間違いなく、その目標に達した。-- ジョセフ・スティグリッツ(コロンビア大学教授。ノーベル経済学賞受賞者)

と評されるように、新しい見方を与えてくれる一冊となった。特に「第7章 理想の才能を求めて」・「第8章 静かなる危機」・「第9章 これはテストでない」に渡ってと、教育者ではなくジャーナリストとして世界中を回り取材した内容から洞察したアメリカの教育制度の危機から、世界の教育制度に至るまでの話には非常に関心を持った。

私たちが何気なくぼーっとしている間にも、中国やインドの人達(の一部)が一日16時間~18時間も働き(or 勉強)、休日も休み無く勉学に励んでいるという。だからといってこちらが、1日20時間勉強して休日も勉強するなどとやっていると死んでしまう。ただ、「世界をフラット化した10の要因」を教育で教えて、だからこそ誰にでも世界を動かすチャンスがあることに興味を持たせるような教育をするべきではないだろうか。教育問題についての知識が皆無な私でも、安部政権が掲げる日本の教育再生はきわめて重要な問題であることはわかる。人口が減り世界がフラット化し外国から高いレベルの教育を受けた優秀な労働力が流れ込んでくれば、個人個人が「雇用される能力」を高めてより発想や付加価値をつけるといったより上のレベルの能力を習得しなければならない。

先日友達と飲んだときに、アーティスティックな才能が必要になる世界を除けば、努力することで成功することはできるという話で盛り上がったが、この表現は間違っていた。CQ + PQ > IQと書かれているように、CQ(好奇心)とPQ(情熱)は「(自分に)努力していること」を感じさせず、人を突き動かす強力なバイタリティとなる。好奇心と情熱がもっと「もっと良い方法はないか」と人を突き動かす。「会議が長いこと」も会社のいいところであり、デザイン部門・開発部門の枠を超えて、未来を変えてしまう革新的なプロダクトを創ることに、ジョブスや天才エンジニア達、全員の強力な熱意・情熱が注がれるAppleのプロダクトが人を魅了しないわけがない。

本文中に「希望を輸出するアメリカ」という表現がある。
先日Apple TV, iPhoneといったプロダクトを発表した、Appleは希望を輸出している企業だろう。モバイル分野では日本が進んでいるのに、日本の企業ではiPhoneはアイデア段階で存在してもプロダクトにはならない。スティーブ・ジョブズだからこそ可能になったiPhoneのユーザー・エクスペリエンスに中島さんが言及している。

フラット化する世界でのイノベーションというのは、「イノベーションの達人 - 発想する会社をつくる10の人材」の「第3章 花粉の運び手」で表現されている他花受粉の全世界版だと思った。つまり発想する会社を作る人材は世界中に存在し、それらを他花受粉させることでイノベーションを起こしていく。それを可能にするインフラが整いつつあるのだ。

PS
フラット化する世界を読み終え、本には大量のコメント付き付箋が貼られた。下巻を半分ぐらい読んだときに、AmazonのリコメンドエンジンにオススメされてA・トフラー作の富の未来(上下)をまんまと注文してしまった。全くいい顧客だ。明日来るはずである。