l'essentiel est invisible pour les yeux

Wednesday, February 21, 2007

[本] 知的ストレッチ入門と知識への冒涜



知的ストレッチ入門」という魅力的なタイトルにとても期待を寄せていたのだが、話題は分散し何か1つに対して焦点を絞り論理が展開されるわけではなく、ビジネス・中国の労働力・メモや仕事術的なLife Hacks・本棚の整理・恋愛・うその見破り方・ブログ・など話が発散している。重要な事はすべて据え置き(「まぁそうなるものだと思ってください。」的な言い回し)となっている。




依頼者にとっては、少なくとも自分が依頼したものに、相手が十分に答えてくれたかどうかどうかが全てなのであって、例えば私のいる文筆業界の場合、評価件は依頼しお金を出してくれた出版社とお金を出して買ってくれる読者にあるということです。

と著者が述べているので、お金を払い本書を購入した評価件を持つ一人として書くことにした。著者が何万冊もの本を所持し、何万冊の本のなかから目的のものを2秒で探し出す事が可能で、本書の執筆のために何十冊も本を読んだかもしれないが、本書は文としてのまとまりに欠け話が発散している。余計な話があちらこちらに存在し、著者の伝えたい主旨が読み取れない。読み終わった際に私が張ったポストイットの数は、おすすめの本棚の商品名が書かれたページ一枚だけだった。

具体的に気になった箇所を挙げる。

択一で悩む無駄という節では、意思決定において即決できない人間が無能の烙印が押される正当な根拠を持っていると結論付け、意思決定においての速度こそが重要であるとしている。

この本文を見て、著者は何度も重大な意思決定に関わった経験がある上でこういった論理に至ったのだろうか?と思った。重大な意思決定の経験がないのではないだろうか?

私は重大な影響を及ぼす意思決定の経験は無い。
しかし、重大な意思決定においてどれだけ熟考されるべきかぐらいは理解しているつもりである。決してまめな人間でなかったGMのアルフレッド P. スローンが人事に対しての自分の決定を、何度も何度も切り捨てそれでも最後まで残った決定のみを人事においての決定とした話は有名である。

もちろんケースバイケースである。
即決する事のみに価値がある決定などファミレスでのメニューの決定ぐらいではないだろうか。(本書にファミレスの例が出てくるので。)少なくとも、高級な店なら「どのメニューがおいしいか?」「この料理にはどのワインがあるか?」十分に悩んで決定する。折角お金を払っていい店に来て安易な即決で満足できないなど馬鹿ばかしい。

フィニッシュの回数という節にはこんな記述がある。


小説を書き始めることは、誰にでもできます。でも、出だしだけ面白いモノを書くことは、体験と少しの文才があれば、確実にできることだけれど、フィニッシュしなければ作品にならないので意味がありません。例え30ページでもいいから、たくさん小説を完成させた人は、きっと小説家になっていけると思います。どんなにつまらなくても、最後に「完」と書けるものをどれだけやったか。それだけが、蓄積される体験、仕事の正体なのではないでしょうか?

この記述を読んだ時に納得できた。
新聞社のメディアのサイトを「深さがない」と批判しながら、全く深さの無い本に仕上がっている。浅く広く集めた内容をまとめ「完」と書いたのだと(少なくとも)私は思った。

Life Hacks的な内容については、オススメの本棚や手帳が商品名で紹介されているのでそれらは参考になるかもしれない。しかし、何万冊もの本をあいうえお順に並べてダンボールにしまうとかそういった内容は著者の作家という職業柄的内容が強いので、私にはほとんど参考にならなかった。メモの使い方についても、GoogleでLife Hacksとググッた方がGTD実践のためのより良い方法が見つかるのではないだろうか。

幅では無く、1つの分野で知識の権威として深いアウトプットをしてきた権威との圧倒的な知識量の差を感じた。


カバンにこだわる
少し話を変えます。カバンにこだわることの素晴らしさの話が本書に出てくるのですが、本書中ではオーダーメイドで著者が欲しい機能全てをつけたカバンにとても満足された様子が書かれていました。

しかし、オーダーメイドでカバンを0から作るというのも面倒な話なので、
私は「Felisiの8637/2」のワインレッドを使用していますが、A4サイズのThinkpadに本2冊・PDFのPaper Book1冊・USBカード・万能ナイフと収納量は十分。そして、何よりもデザインがカッコイイのでとても気に入ってます。Felisiのカバンのナイロンと皮のコラボレーションは他に無いオサレ感があります。写真は左上です。