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Sunday, February 04, 2007

知識労働者におけるプライオメトリクストレーニング



スポーツをしている人は体を鍛え筋肉をつける。目に見えやすい大胸筋, 僧帽筋, 腹筋, 上腕二頭筋といった筋肉をまず鍛える。これらの部位は筋力トレーニングの成果が目に見えて現れやすく、自分の体が変化している事が自分にも回りにも理解されやすい。

しかし、筋力トレーニングに費やした努力をスポーツにおいての成果に結びつけるには、大きな筋肉を鍛えるだけでなく大きな筋肉間をつなぐ小さな筋肉や腱を鍛える必要がある。この筋力トレーニングは、プライオメトリクストレーニングと呼ばれる。プライオメトリクストレーニングではウエイトトレーニングで養った筋力を瞬発力に結びつける力を養う。目に見えて変化の明らかなウェイトトレーニングに加えて、(一見地味だが)プライオメトリクストレーニングやストレッチによって柔軟性を確保することで初めてトレーニングが成果に結びつく。ここでは、重たいダンベルなどを使ってウェイトトレーニングと比較して、自分の体重を主たる負荷とするプライオメトリクストレーニングを地味と書いた。

スポーツをする人は、練習やトレーニングの効果を試合で確認する。
練習やトレーニング効果があったかどうか?
どういう種類のトレーニングが足りなかったか?
これからのトレーニングはどういったメニューにするか?
実践(試合)を経験することが成果に対する努力を振り返る機会となる。


自らの肉体を商売道具とする人にとって、肉体を技能やパフォーマンスに結びつけるプライオメトリクストレーニングが重要なのと同じように、自らの知識を道具とし成果をあげる知識労働者においてもこの"知識労働者におけるプライオメトリクストレーニング"が重要ではないだろうか?

知識労働者においての財産は自らの知識である。自らの肉体を商売道具とする人と同じように頭脳を商売道具とする人も頭脳を鍛えなければならない。頭脳を鍛えなければ大きな成果をあげることはできない。では、知識労働者におけるウェイトトレーニング・プライオメトリクストレーニングとは一体何だろうか?この問いについて考えてみた。

読書や勉学が頭脳におけるウェイトトレーニングではないだろうか。
自分が知らない事を勉強し理解を深める。ウェイトトレーニングにより目に見えた成果が現れる。しかし、肉体におけるウェイトトレーニングと同様に、ウェイトトーニングによる効果を成果に結びつけるためにはプライオメトリクストレーニングが必要になる。

読書や勉強により覚えた物事はすぐに成果に結びつくとは限らない。「筋力を瞬発力」に対して「理解を知識に。知識を成果に。」と結びつなげるのが頭脳におけるプライオメトリクストレーニングである。

では、頭脳におけるプライオメトリクストレーニングとは一体何だろう?
まず1つは興味・関心を持つことである。頭脳におけるウェイトトレーニングで身に着けた理解に対し興味・関心を持ち、理解している物事を発展させる能力。これが興味・関心である。理解に対する興味・関心は知識へとなり、次の新しい理解へのウェイトトレーニングへとつながる。「好きこそ物の上手なれ」といった言葉が言い表している通りである。

2つ目は"知識に対して自ら問いを投げかけ考える"能力である。
IBMの創業者トーマス・ワトソンが"Think"と言う言葉を口癖にしていた話は有名だが、知識を成果に結びつけるためには常に考えなければならない。肉体におけるウェイトトレーニングの成果は一定の期間が経過すると衰えていくが、一度身につけた知識は衰えない。その代わりに知識は急速に古くなり役に立たない死知識へと変化する可能性を持っている。

個人が手に入れることの出来る情報量は、インターネットとWWWの発展により格段に増えた。アップローディングも急増している。今の時代、知識が死知識になる速度が急激に早まったのはA・トフラーが「富の未来」で指摘している通りである。

特定の問題と向き合い、現時点での自分の知識で最良の答えを出すとしたら、それは何だろう。問題に対して"知識を利用し最良の答えを考えた"事が知識と知識を結びつける頭脳におけるプライオメトリクストレーニングに他ならない。日常で解決困難な問題と遭遇する機会が無ければ自分で問題を設定しなければならない。問題は何でもいい。簡単なことでも馬鹿げていることでも問題を設定し、自分の知識を利用して最良の解を探すプロセスが重要である。


と、知識労働者におけるプライオメトリクストレーニングについて考えてみた。
高校生の時は毎日体を鍛えた。プロテインを飲んだ。鍛える事が自信になりクラブ活動における成果にも結びついた。今は必死で頭脳を鍛えている。雑誌を読み何がなぜ流行しているか考える。経営哲学の本を読み21世紀を勝ち抜く組織について考える。ホテルのサービス哲学の本を読みおもてなしについて考える。技術本を読んではプログラムを書く。

スポーツの世界では、成功するための条件において才能や負けん気の強さから生じる努力が大きなウェイトを占めていると思う。知識を成果に結びつける世界では、人一倍の興味・関心から生じる努力が成功への大きな鍵となる。